トヨタ自動車の豊田章男社長がオリンピック中止を宣言する理由
オリンピック。
池江さんに辞退しろという人がてメッセージが発信されたり、バッハ会長が来るとか来ないとか言っていたり。
なんだかわさわさしている。
やっぱり日本人は「あきらめる」とか「逃げる」のが嫌いで、「やりきる」とかが大好きだから、中止するというのは結構難しいんだろう。
「負けないで、もう少し、最後まで走り抜けて」
だもんね。
諦めたらそこで試合終了だし、背中の傷は剣士の恥なのだ。
やむを得ないといえばやむを得ない。
とはいえ中止するしか無いと思うのだ。
問題は、誰が、いつそれを言い出すかだ。
もちろん関係者みんなで相談してるかも知れないし、誰かが言い出すのをみんなで息を潜めて待っているのかも知れない。
そんなことを考えていた。
で、そういえば違約金が2000億とか3000億とかかかるという話があったなと思って、そのくらい東京都でも日本政府でも払えないことはないんじゃないかと思ったのだけど、その違約金は最終的にスポンサーに支払われる?のだというような怪しい情報を目にしたので、スポンサーのリストを見てみたのだ。

こんな感じで日本の名だたる名門企業が名前を連ねている。
海外からはP&G、Intel、VISAなんかは日本での売上がグローバルの売上の20%とか30%とかありそうな会社たちと、間違いなく世界一の名門企業の一つといっていい、GEだ。
Samsungが入ってるのはよくわからないといえばわからないけれど、まあ一流のグローバル企業としての責務を果たそう、ということなのだろう。
このリストを眺めていて、はたと気がついた。
この会社の中で、1社だけ、オリンピックをやめようと言い出せる会社がある。
いや、正確には、海外の会社のことは私にはわからない。
ただ、日本企業ならここ、というのがあったのだ。
そう。
トヨタ自動車だ。
あそこは、語弊を恐れず言えば、事実上オーナーカンパニーなのだ。
社長がこうと言ったらそうなる、というのが通用する。
そしてトヨタ自動車の豊田章男社長といえば、マーケティングにもめちゃくちゃうるさい男。
つまり、端的に言えばカッコつけたい人なのだ。
いまこのタイミングで、オリンピックについてどう考えているのか、発信しない選択肢がむしろないかもしれない。
森喜朗の失言のときだって、わざわざ顔までだしてコメントしていたのだ。
さらにダメ押しですごい情報が見つかった。
豊田章男。
かつてホッケー日本代表に選ばれて、オリンピックにも出られるはずだったひとなのだ。
はずだった。
そう。
彼が日本代表だったのは1980年。
その年開催されたモスクワオリンピックは政府のボイコットで誰も出られなかった。
その悔しさは「誰よりもわかる」男なのだ。
おい。
おいおい。
おいおいおい。
これはあるよ。
今、世界中が、東京でオリンピックやるのは無理でしょって思ってる。
いや、日本ならなんとかするだろうと期待してくれている国々がたくさんあるのもわかる。
でも、少なくともわかるひとにはわかる。
無理なものは無理だ。
で、その人達はみんな、いつ、誰が「やめようぜ」って言い出すか、固唾を飲んで見守っている。
言い出した人は、英断だ、さすがだと称賛も受けるかも知れない。
しかし一方で、そんなことを言ったらオリンピックに出る予定だったアスリートは皆天を仰ぎ見て涙を落とさないものはなく、一部からは轟々たる非難を受けるかもしれない。
必要なのは、勇気だけじゃない。
圧倒的な、有無を言わさぬ説得力と、何より力が必要だ。
政治家ごときには無理だ。
そんな中で、だ。
経済大国日本を代表する企業であるトヨタ自動車、代表取締役社長豊田章男が現れるのだ。
オリンピックが中止になったら、オリンピックのスポンサーとして一番大金をドブに捨てたことになるのがトヨタだ。
そのトヨタの社長が、言い出すのだ。
「2000億円、トヨタが負担してもいい。とにかくオリンピックはやるべきじゃない。やめよう。」
トヨタの売上はざっくりいうと約20兆円で、利益は毎年大体2兆円。
マーケティング費用は毎年5000億円くらいかけている。
トヨタにとっては無理な数字じゃない。
いや。
むしろ、都知事も言えない。
首相も言えない。
山下JOC会長は存在感ゼロ。
森元会長は失言でいなくなってしまっていて戦闘不能。
新任のオリパラ組織委員会会長も五輪相も論外。
どうなるんだというところに、最大のスポンサーが物申すわけだ。
誰も言わないなら、俺が言う、と。

一旦、しーんとする。
それから、恐る恐る、そして割れんばかりの拍手が巻き起こる。
さすがトヨタだと、世界中から称賛が集まる。
何しろ、誰かのせいにしてオリンピックを中止できればこんなに安心なことはみんな無いのだ。
そして、そもそもトヨタを批判する人がいなくて、トヨタを批判できる人がいなくて、豊田章男社長を批判して得をする人がいないのだ。
いや、もちろんある程度の批判はあるだろうけど、組織だったものにはならない。
そしてそれ以上の称賛だ。
これをやれば、トヨタのブランドイメージは、21世紀の間は落ちることがないだろう。
そのぐらいのインパクトだ。
2000億円はマーケティング費用として完全にペイしているだろう。
何しろ「オリンピックをやってればこんなことにならなかったのに」ということは絶対にないのだ。
だってどうせできないのだ。
比較はしようがない。
やってたらどうなっていたかというシミュレーションはできても、それはCOVID19に関する悲観的なものばかりになるだろう。
で、じゃあトヨタが違約金を払うかって言ったら、そうはならない。
だってトヨタなのだ。
どうせ次のオリンピックもそのまた次のオリンピックも、何なら21世紀中のオリンピックの、ひょっとしたら最大口スポンサーであり続ける可能性すらあるのだ。
IOCが文句を言えるはずはないのだ。
万が一誰か払えとなっても、そのときにはトヨタ以外のスポンサー企業だって我も我もと手を上げるだろう。
何しろこのリストの中で言えば、ブリヂストンは遠い親戚だ。
アサヒビールは近い親戚、三井グループは関係が深いからSMBCや三井不動産は手下みたいなもの。
このあたりが賛意を示したら、あとは雪崩を打つようにみんな勝ち馬に乗るのだ。
で、手柄はトヨタ、負担は分担で、となる。
そもそも払えとならないだろうけど、なったらなったでそうなるに決まっている。
くりかえしみたいになるけど、トヨタの社長に「おまえそれはちょっとちがうんじゃね」といえる人もいないし、万が一言う人がいたとしても、トヨタ自動車も豊田章男社長も痛くも痒くもないのだ。
何しろ豊田章男社長は、どこぞの雇われ社長や政治家、あるいは成金の起業家やらとは違う。
発明王にして豊田グループ創始者である豊田佐吉から数えて4代目。
佐吉の長男にしてトヨタ自動車工業創業者である豊田喜一郎から数えて3代目。
つまり豊田章男社長は生まれながらに三代将軍、じゃなくて、生まれながらに日本を代表する超大企業、世界のトヨタの社長なのだ(*トヨタ自動車の社長としては11代目)。
ただし、これを豊田章男社長が言いだすには一つ条件がある。
直前期の決算の数字がはっきりしてからだ。
じゃないと株価に変な影響が出てしまう。
これは上場企業の社長として絶対に守ったほうがいいやつだ。
というわけでトヨタ自動車の決算発表の日付を調べてみた。
2021年3月期の決算発表は5月12日。
なるほど。
やっぱりか。
そろそろ3月決算の会社は各社決算発表しているのだけどトヨタはまだだったのだ。
5月12日。
明後日が東京オリンピック2021が終わる日か。
期待して待とう。

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