「がんばってね」
春。
別れの季節。
昨日で年長さんは卒園。
中には最近たいきが一緒に帰りたいと言って、毎日のようにお迎えを待って一緒に帰った子なんかもいる。
年中さんの、たいきがまた歩くか歩かないかみたいなころから一緒に遊んだり一緒に帰ったりしていたお兄さんも、ひとり転園した。
登園中。
公園に咲く満開の桜。
ベビーカーから手を伸ばして舞い散る花びらにさわろうとするのはなを見ながら、たいきに聞いてみた。
「たいきは今度なにクラスになるんだっけ」
『わかんない』
「もう年中さんだね」
『うん』
「お世話になったお兄さんやお姉さんには、ちゃんと昨日バイバイできたの?」
『なに?』
「◯◯ちゃんとか、◆◆くんとか、一杯遊んでもらったでしょ。」
『うん』
「みんな保育園は昨日でおしまいだったでしょ」
たいきは少し考えて言った。
『がんばってね、のこと?』
ああ。
なるほど。
バイバイ、じゃなくて、がんばってね、か。
それならさみしくないな。
のはなが歩きたいというのでベビーカーからおろしてやった。
のはなは今日から1才児クラス。
となりの部屋は0才児クラスで、今日からならし保育がはじまる。
夕方になって園児が減ってくると、0才と1才あたりは合同保育にもなる。
のはなもいっちょ前にお姉さんになるのだ。
たいきのフロアには年少さんから年長さんまでがいる。
たいきなんか、年少さんだった昨日までももちろん、幼児クラスのころから随分年中さんや年長さんの子達に可愛がってもらっていた。
とうとうそのたいきも年中さんだ。
もう、押しも押されもせぬお兄さんなのだ。
二人ともそれぞれに、随分大きくなったなぁ。
前を歩く二人の背中に
「がんばってね」
と呟いた。

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