アンガーマネジメント失敗
なんかイライラしていたんだろうか。
疲れていたといえば疲れていた。
まあ、つまらないいいわけだけど。
それは突然だった。
風呂から上がって、みんなで奥さんの部屋に行って、広いベッドの上に寝転がって天井に映すおもちゃのプロジェクターみたいなやつで絵本を見た。
いくつかお話を見て、さあそろそろ寝ようかなというときに、暗がりの中でたいきが寝転がっている私の方に後ろ向きに寄りかかってきた。
で、結構な勢いで私の顔面にたいきの後頭部がぶつかった。
私の眼鏡と鼻に後頭部をぶつけて、たいきも痛かっただろう。
私はかなり痛かった。
「いたっ」
と私が声を上げたら、たいきが振り返って
『ごめんね』
と言った。
しかし、何かその時、ごめんねと言われる直前に、ぶわーっと怒りがこみ上げてきた。
私は結構キレやすい。
大声を出したり叩いたりしないし、表に極力出さないようにがんばっているけど、少なくとも一緒にいる奥さんはめちゃくちゃ気づいていると思う。
そりゃ、子供と過ごしていて痛い思いをすることなんかいくらでもある。
ちょっとむかっとするようなことがあっても、基本的には叱ったり怒ったりしない。
しかしなんか、昨日はそれがすごい勢いで出てしまいそうなくらいいきなり感情が高ぶった。
とにかくここを離れなきゃ。
「もうやだ。お父さんはあっちに行く」
今考えればそんなことも言わないほうが良かったし、一言「いいよ」と言えば良かったのだけど、それができなかった。
後ろも見ずにそそくさと立ち去る。
後ろからたいきがひーんと泣き出すのが聞こえた。
奥さんがどんなフォローをしてくれたかはわからない。
とにかく自分の部屋の布団に寝転がって深呼吸。
落ち着こう。
それだけで頭がいっぱいだった。
たいきの泣き声はすぐに止んで、しばらくするとたいきがたくさんのぬいぐるみを持ってこちらの部屋に来た。
おやすみのお供だ。
リビングから奥さんの寝室、そして私の部屋へと毎晩大移動する一式だ。
「こっちで寝てくれるの?」
『うん』
みるみる気持ちが収まって、後悔に襲われた。
残念ながら私がいい人なわけじゃない。
DVとか虐待とかする人の、ハネムーン期のあれだ。
しかしまあ、怒りが収まったのはいいことだ。
たいきも泣いて謝るとかそういうわけじゃない。
こういうとき本当に困ってしまう。
怒りを子供にぶつけて、その後抱きしめるような真似をするのは良くないと思っているのだけど。
一方で安心させてあげたいし抱きしめたい。
心のなかでため息をつく。
しかし、とにかく私の行動にたいきがどれくらい傷ついたかわからないけれど、信じてこちらに来てくれたのだ。
それはありがたい。
私が父に叱られたときとかは、怖くてその後、顔を見ることもできなかったなぁなんてことをぼんやり思い出した。
私が父と違うのだと思いたいけど、たいきが私と違うのかも知れない。
とにかくちゃんと謝ろう。
「たいきはちゃんとごめんねしてくれたのに、お父さん意地悪言ってごめんね。お父さんいけなかったね。」
『うん』
「一緒に寝よう」
うん、と言いながらたいきはぬいぐるみたちを片方の布団の枕に並べて、それからもう片方の布団にトーマスのブランケットをきれいに敷いて、その中に潜り込んだ。
うーん。
見事に私が寝るところがない。
まあ、いい。
どうせ私はこのあと洗濯物を干さなきゃいけないからすぐには寝ない。
サザンオールスターズの東京Victoryをかけてくれというのでかけてやる。
それから真夏の果実のイントロを流したら
『たいちゃんこれしゅきじゃない。ばっはにして』
毎晩ジャンドロンの無伴奏チェロなので、今日はカール・リヒターのオルガンのアルバムにする。
「これでもいい?」
『うん、いいよ』
その後もなんだかんだごそごそしてなかなかすぐには寝なかったけど、とにかく平和な夜だった。
こういうことはこれからもあるだろう。
いちいちケツを拭かされる奥さんは大変かもしれないけど、奥さんがいて本当に救われる。
まだまだだ。
もう少し頑張らないと。

ディスカッション
コメント一覧
十分アンガーマネジメントしてると思います
ヤダっていう正直な気持ちを親が抑圧することで
子供もネガティヴな気持ちを抑圧するのが
正解だと思う方が怖いです。
素直に認められる素直な大人になってほしいからこそ、
たいきパパは
暴力を振るったわけでもなく、暴言を言ったわけでもなく
素直にキレそうな気持ちのイントロだけ流したけど
立ち去ることで冷静なったんだから、これはこれで素晴らしいと思います
なるほど。ありがとうございます。救われます。
そして、ネガティブな気持ちを抑圧するのが正解と子供に思わせるのもよくない、か。なるほど。
考えること気を付けることがたくさんありますね(^^;
返信ありがとうございます。
私はこのブログの読者です、読者はたくさん居ることが数字で
フィードバックある分もう少しコメントが欲しいというメッセージがあり
たいき君パパは多角的視点から分析できる方なので、偏見や差別的な内容がなくコメントが少なくてもいい意味で好意的な読者の温和な静寂感なんだろうと思います。
昨日は自責の念が文面に溢れておられるようでしたが
あのシチュエーションで子供の頭がぶつかったらキレたくなるのは、
よくわかりますよ、それでもたいき君が寝る時寄って来たって事は
パパはそんなに悪くなかったって事の証明だと思います。
これからも悲喜交交のエピソードを読者は待っています。
長文失礼しました、応援させて頂いてます。