たいきの宝物は
二日前に奥さんと話し合って、たいきへのコミュニケーションを二人で変えるようにした効果が早速現れた、というわけじゃないかもしれない。
どういう気分の変化なのか、気の迷いなのか、気まぐれなのか、さっぱりわからない。
とにかく、たいきは一昨夜、昨夜に引き続き今夜も私の隣で寝た。
ぬいぐるみをいくつも布団に並べて、掛け布団をかけて、それらのぬいぐるみと並んで横になった。
「たいき、ぎゅーってしてもいい?」
『いいよ』
お許しが出たのでたいきにハグをしておでこにキスをする。
「たいきはお父さんの宝物だよ」
たいきは嫌がらなかった。
そして私の顔を見ていたずらっぽく笑う。
『たいちゃんのたからものはねぇ』
笑顔で「うん」と相槌を打ちながら、心の中でため息を付いた。
またいつもの「おかあしゃんと、のはなちゃんと、じーじと、ばーばと、、、」という「お父さん以外の知ってる名前を全部並べる」やつを聞かされるのか。
『おとーしゃんかな』
嬉しすぎて、意味がわからなくて、思わず笑ってしまう。
「え?お父さん?」
『うん』
なんで?って聞くのも変だし、ほんとに?って言うものでもないし、ええと、なんだこれ。
どうしたらいいんだ。
まごまごしているうちにたいきは全然関係ない別の話を始めた。
まあいい。
お母さんであれ、お父さんであれ、先生であれ、お友達であれ、たいきが誰かを「宝物」と思えるというのは、たいきが満たされているということだと思う。
それで十分だ。
たいきは今夜見る夢はどんな夢かなぁみたいな話をひとしきりして眠ってしまった。
いい夢を見られますように。

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