お兄ちゃんの優しさにお父さんはどこまで甘えていいのか
たいきとのはなと公園へ。
のはなはもう、公園に行くのにベビーカーには乗らない。
大事そうにのはなの頭ほどもあるボールを抱えて、一生懸命歩く。
たいきはばーばとじーじからもらった三輪車。
私は三輪車をゆっくり押し、のはなを見守りながら公園までの数十メートルを歩く。
公園につくとたいきがのはなからボールを受け取って、すごい勢いで走り始めた。
のはなが両手を差し出しながらそれを追いかけて走る。
もちろん追いつかない。
たいきは走って戻ってくると、けらけら笑いながらのはなと私を中心に半径3メートルくらいの円を描くように何回転か走った。
のはなが泣かないかなと思って心配してみていたけれど、のはなも楽しそうに笑っている。
これが続いたらそのうち癇癪を起こすのだろうけど。
どうなるかなと思っていたら、6−7回々ったところで、たいきが歩みを止めて、のはなにボールを渡してくれた。
のはなが大喜びしてボールを持って走り始める。
今度はたいきが追いかける番だ。
もちろん、あっという間に追いつく。
あっという間に追いつくのだけど、たいきはきゃあきゃあいいながら、わざとゆっくり走ってのはなの背中に触ったりなんかしている。
強く押すとこけてしまうことも覚えてくれたらしい。
のはなは歓声を上げながらドテドテ逃げる。
たいきが手加減しながら追いかけ回す。
優しいのだ。
しばらくそんなふうにかけっこが続いた。
1歳ののはなにしっかりかまってやると、たいきがどこに飛んでいくかわからない。
4歳のたいきに言われるままに公園を一緒になって走り回るとのはなから目が離れてしまう。
どっちも困るので、結局どっちもできない。
二人がこうやって一緒に遊んでくれるのは私にとってはありがたい。
しかし、のはなにとってはやっぱり手加減がわからないお兄ちゃんと遊ぶのはなかなか難しい。
たいきにとっても、なんにも聞き分けないし遊び相手としては体力もないのはなと遊ぶのはなかなかストレスだろう。
こうやってちゃんと合わせてくれるのは嬉しいけれど、子守を押し付けているようであんまり手放しで喜べることでもない。
4歳児は4歳児らしくお父さんと駆けずり回って遊ぶのが言いに違いない。
1歳児は1歳児らしく、お父さんに見つめられて一生懸命自分のペースでボールを追いかけたり砂をいじったりするのがいいに違いないのではないかと思うのだ。
しばらくするとたいきはボールをのはなから取り上げようとした。
そりゃそうだ。
しばらくのはなはボールを持って走って遊んだのだ。
今度はたいきの番だ。
しかし、当たり前だけどのはなはボールをはなそうとはしない。
たいきが少し強引に取り上げようとすると、のはなは必死で身をよじって抵抗しながら抗議の声を上げた。
「ちょっと」
二人に声をかけると、たいきがびくっとこちらを見た。
そうだよね。
どうしても二人がおもちゃを取り合っていると、たいきになにか言うことになってしまうことは多いのだ。
「たいき、いいんだよ。たいきの番だもんね。」
たいきは安心した顔になった。
のはなはもちろん不満そう。
二人とも私の声は聞こえているけれど、相変わらず手ではボールを取り合っている。
まあ、放っておけばあと数秒でたいきがボールをひったくることになる。
それはそれでいい。
「のはなさん、順番だよ。たいきがさっきボールを貸してくれたでしょう。今度はたいきに貸してあげなきゃね。順番。」
たいきも随分小さい頃からこの「じゅんばん」という言葉を使っていた。
もちろん当時一人っ子だったたいきが、その言葉を家で覚えたわけではない。
保育園で覚えたのだ。
いい言葉だから、のはなにもぼちぼち使っていこう。
私が話している間にたいきはのはなからボールを取り上げた。
のはなが私の顔を見た。
まだ泣いてない。
「またたいきがちゃんとボール貸してくれるよ。順番に使うの。わかる?」
のはなは超不機嫌な顔をしていたけれど、うんとうなずいた。
そして、なくかなと思ったけれど泣かなかった。
ちゃんと?わかったらしい。
のはなはその後砂場セットの方に歩いていって、砂場遊びを始めた。
たいきはたいきでボール蹴りをしたり、三輪車を乗り回したり。
二人ともボールでも遊んだけれど、幸い取り合いみたいなことはもう発生しなかった。
たいきが滑り台を滑るのを見て、のはなも滑り台を滑りたいというので、たいきに一緒に滑って上げてくれないかとお願いしたら、何度も一緒に滑ってくれた。
しかしそうやって一緒に遊んでくれればいいのだけど、そればかりではない。
二人とも目が離せないので、どうにも大変なのだけれど、やっぱり二人とも別々のところで遊ぶから、完全に二人ともを見ていてあげるわけには行かない。
たいきは一生懸命走っていたのを私が見ていなかったのが悲しかったらしく、珍しく自分から「帰る」と言い出した。
申し訳なかったなと思いながら、のはなとおもちゃを片付けて家路についた。
とにかく、兄妹だ。
これが兄妹かぁって思う。
こういう時間を過ごしながら、お互いにかけがえのない存在になっていくんだろうか。
たいきはのはなのことをどう思っているんだろう。
のはなはたいきのことをどう感じているんだろう。
私は兄ではあったけれど、2つ下の弟のことを3つか4つくらいのときにどんなふうに思っていたかは覚えていない。
まして弟が1歳とか2歳くらいのときに兄をどう思っていたかなんてまるでわからない。
だからまあ、考え過ぎなのかもしれないけれど、とにかく二人が不満や悲しい思いをしないように、一生懸命お父さんをやろうと思う。

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