『しょうゆうこともあるよ』
最近、たいきは
『しょうゆうこともあるよ』
というのを覚えた。
どこかぶつけたときとか、何か落としたときとか。
少し悲しそうな顔で言う。
眠っているのはなを起こしてしまったときとかにもよく言っている。
これを言われると、かわいくてかわいくて、全然腹をたてられない。
昨日はたいきのせきと鼻水がひどいので一緒に病院に行った。
風邪かもしれないし、花粉症かもしれないとのこと。
なるほど。
3歳でも花粉症になるのか。
そういえば前回同じ症状で先生のところに行ったとき、花粉症であれ他のアレルギーであれ、保湿ケアでせきが止まると言われたんだった。
それ以来毎晩べったべたに保湿クリームを塗っているのだけど、先週はなんかバタバタしててサボりがちだった。
そのせいかな。
反省。
診察で背中とお腹をもしもししてもらって、お口の中も見てもらったあとは、何やら顔面?に薬を吹き掛けるやつを5分ほどがんばって。
さらに鼻の穴をぐりぐりして鼻水をすいとってもらったのだけど、随分がんこなやつがいたらしくかなり大変そうで、たいきはイヤイヤと言いながらもよく我慢した。
『たいちゃん、おしゅくりもらいたくなっちゃった』
まだお薬がおしゅくりになる。
もちろん薬がほしいわけじゃない。
薬局でいつも飲ませてやるアンパンマンのジュースが飲みたいのだ。
「よしよし。がんばったもんね。ジュースも買ってやろうな。」
薬局は病院のすぐ近く。
たいきは勇躍、といっていい歩調で乗り込んだ。
そして、たちすくんだ。
なんということか。
コロナのせいなのか。
薬局の冷蔵庫にアンパンマンのジュースが一本もない。
「アンパンマンのジュースはないですか」
「すみません。売り切れなんです。」
しかたない。
処方箋を出してベンチに座る。
たいきが悲しそうな顔でこちらに来て、となりに座って口を開いた。
『しょうゆうこともあるよ』
あー。
もう。
かわいい。
泣くでもなく、わめくでもなく。
ただただ悲しそうと言うか、寂しそうな顔。
しかたないので帰りにスーパーに寄って、お菓子とアイスと唐揚げを買ってやった。
たいきはがんばったのだ。
ごほうびは必要だ。
『あいしゅは、ごはんたべたらたべる!』
ちゃんと自分でルールも言えるのだ。
いい子に成長したなぁ。
まだまだ、もう少しわがままでいいのに。