ブラック企業大賞を受賞した三菱電機は本当にブラック企業なのか

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今年もブラック企業大賞の季節がやって来た。

今年の大賞は三菱電機が選ばれた。

同企業二年連続での受賞も初めてだし、そもそもひとつの企業が二回選ばれるのも初めてのことだ。

ブラック企業大賞のホームページに書かれた三菱電機の『罪状』はざっと言うとこうだ。


2017年末、三菱電機の子会社(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社)は、当時40代の技術者が自死し、2019年10月に労働基準監督署によって長時間労働による労災であると認定された。


ちなみに、メルコ、というのはMELCOでMitsubishi ELectronic COrporationの略で、つまり三菱電機のことだ。

三菱電機のメールアドレスは@melco~だったりするし、子会社にはメルコという名前がついている会社も少なからずある。

電機業界の人は三菱電機のことを結構な確率でメルコと呼ぶ。

三菱というと『三菱重工業』とか『三菱自動車』とか『三菱商事』とか、なんなら『三菱鉛筆』まであってややこしいからだ。

ちなみに単に『重工』さんと言えば業界では『石川島播磨重工業(現IHI』でも『川崎重工業』でも『住友重機械工業』でも『富士重工業(現SUBARU)』でもなく、三菱重工業のことを指す。

『商事』と言ったら、『住友商事』でも『伊藤忠商事』でも『海山商事』なく三菱商事のことを指すのと同じだ。ちなみに『物産』と言ったら『三井物産』だ。

さらにちなみに、三菱鉛筆は名前に三菱がついているけれど、三菱グループとは関係ない独立系の会社。

話がそれすぎたので話を戻そう。


三菱電機グループでは、2014年以降に、社員が自死したり精神障害を発症したりしたケースが3人目。

また、本体の三菱電機では、2014年から17年に男性社員5人が長時間労働が原因の労災認定され、うち2人が自死した。

また、三菱電機では新入社員が2019年8月に自死。教育主任だった30代の男性社員が自殺教唆の疑いで書類送検された。

自死の現場には、教育主任から「死ね」などと言われたことなどを書いたメモが残されていたと言われている。


この記事を読んで、私はおやおやと思った。

うつの発症率は大体4~7%と言われてて、三菱電機は連結で14万人従業員がいるってことは数千人~10000人くらいうつで休職してる人がいるはずだ。

人事の常識として『14万人従業員のがいて精神障害を発症した人が3人』などというわけはないのだ。

私が人材ビジネスを通して内情を知った会社(数千社はある)は、500人くらいの会社ならどこでも毎年数人は普通にうつで休職していた。

500人の会社ならうつの休職者(休職中の人)が20人くらいいても、特段ブラック企業というわけではない。

人間はどんなに大事にされても、どこで何をしていても大体5%位うつになるのだ。

そして『重症』のうつ病の生涯自死率は15~20%。

だからこのくらい従業員がいる会社で自殺者がでることは実はそんなに珍しいことではない。


もちろん労災(労働災害、つまり業務上の死傷病のことだ)があったということは重く受け止めるべきだと思うけれど、どんなに遺族ががんばっても、特に自死の労災認定というのは会社が認めない場合なかなか簡単ではなかったりする。

逆に、まともな会社であれば遺族のために労災認定に協力的に行動するものなのだ。

というか、本来従業員がやる申請を会社が代わりにやることだってある。

そもそも労災認定は企業への罰ではない。

普通の怪我や病気なら病院でお金を払うし、仕事を休んでも給料はでない。

労災認定されれば、労災保険から医療費が全部まかなわれる(ただで治療や診察を受けられる)し、仕事を休んだ分の補償ももらえる。

企業としては、大事な従業員が業務で傷病を負ったのであれば当然労災の申請をサポートする。

それは当たり前のことだ。

残念ながら、時々、労災申請を渋る会社がある。

面倒なのか、評判が落ちると思うのか。

いずれにせよそれは極めて悪質なことだ。

会社がまず労災を認めてくれないと、労災の申請は難しい。

会社が労災を認めてくれるかどうかは労働者にとってはとても大きいのだ。

三菱電機が協力的かどうかは知らないが、非協力的だという報道もないようだ。

三菱電機くらい従業員がいれば、毎年数え切れないくらい労災はあるだろう。

しかし三菱電機は多くの企業で見られるような、ワンマン経営者のメンツのために従業員をおとしめるようなことをする文化とは無縁の会社という印象は強い。

そういう会社では『災害ゼロ何日目!』という張り紙の数字を増やすために労災申請をしぶったりするのだ。本末転倒もいいところだ。

三菱電機はそうではあるまい。

何しろ災害ゼロが可能な人数ではない。

現に、直近の新入社員のケースについても遺族が労災申請と損害賠償請求をするという発表に対して、三菱電機の広報は『新入社員が尊い命を落とす事態が起きたことを重く受け止め、真摯に対応してまいります』とコメントしている。

かつて月140時間の残業をさせていたどこぞの飲食企業の代表が自死した従業員のことについて『労務管理できていなかったという認識はありません』などとなめくさったツイートをして大炎上したことを思い出す。


この、直近の新入社員のケースは、確かにひどいのかもしれない。

真実は捜査機関と司法機関が明らかにするまで、断定はできないけれど、まあ仮に今報道されている、教育担当者のパワハラが事実だったとしよう。

しかし、だ

残念ながら私が通っていた小学校にも、中学校にもいじめはあった。

30人も人がいれば、いじめをするやつは出てくる。

三菱電機グループは14万人だ。

当然、聖人君子ばかりではないだろう。

陽気な人間もいれば陰気な人間もいるだろうし、陰湿な人間やいじめを楽しむような最低の人間だって、当然いるはずだ。

教育をしようが、罰則を作ろうが、評価制度に組み込もうが、必ずいるのだ。

これを読んでいるあなただって、そういう人のひとりやふたり、簡単に顔が浮かぶはずだ。

残念だけど、珍しくないのだ。

これが、社長や役員がそういう人間で毎年新入社員の半分がやめるとか、営業マネジメントが基本的にパワハラで定着率が異常に低いとか、そういうことならそれは間違いなく企業体質の問題だ。

三菱電機はそうではない。

14万人のなかに陰湿なパワハラをする人間がいたのだ。

もちろんなくなった方がいた以上軽視していいことは全くないけど、14万人を完全にマネジメントすることは不可能だ。

なにしろ30人くらいの会社にもそういう人は結構な確率でいるのだから。


三菱電機がブラック企業なのかどうかは、そういうことを踏まえて、企業体質を見極めなければならないのだけれど、どうもブラック企業大賞の事務局メンバーを見ると、そういうことがわかっていそうな人がいない。

●内田聖子(NPO法人アジア太平洋資料センター〈PARC〉共同代表)

●河添 誠(労働運動活動家/都留文科大学非常勤講師)

●坂倉 昇平(NPO法人POSSE理事、ブラック企業ユニオン代表)

●佐々木亮(弁護士)

●神部 紅(ユニオンみえ書記長)

●土屋トカチ(映画監督)

●古川琢也(ルポライター)

●松元千枝(ジャーナリスト)

●水島宏明(ジャーナリスト・上智大学教授)

なにしろ経営者も人事のプロもひとりもいないのだ。

それどころか、企業という組織で働いたことすらない人たちばかりに見える。

これでは『起こった事象のひどさ』には着目できても『体質の問題』のことはわかるまい。

仮に三菱電機の従業員で精神障がいを発症した人が何人もいたとしよう(上述の通りいるに決まってるけど)。

しかし、三菱電機は日本で15番目に従業員数が多い会社なのだ。

そういう人の数は、他の会社より多いに決まっている。

日本には1800位市町村があるのだけど、そのうちの1600くらいの市町村は三菱電機の従業員数より人口が少ない。

三菱電機だけでディズニーランドのある浦安市くらいのひとがいるのだ。

それだけ人がいたら、全員が聖人君子で、全員が健康で、というわけにはやっぱりいくまい。

それをもって『ブラック企業』のレッテルをはることには私はどうも違和感を感じざるを得ない。


自死であれ病死であれ事故死であれ労災であれ、何年か人事の仕事をしていると必ず経験する。

その時に、亡くなった方にどう向き合うのか、ご遺族に何を語るのか、社会にどう説明するのか。

そういうことが、企業がブラックかどうかを決めるのだ。

私がかつて勤めていた会社で、新卒二年目の男性が病死したとき、私の上司はその後一年間黒いネクタイで仕事をしていた。

例えばそういうことだ。

今後の報道に注目したいが、もし三菱電機がブラック企業ではないなら、大した報道はされないだろう。

ご遺族と誠心誠意話し合い、謝罪し、損害賠償するという流れになれば、それはその謝罪や賠償の中身も含めて、故人やご遺族のプライバシーに関わることだから三菱電機はあえて公表はするまい。

ご遺族も、その対応が誠実なものである限り、あえてその内容を公言したりはしないだろう。

そんな風にこの事件が扱われるのは、決して悪いことではない。

三菱電機には故人のためにもご遺族のためにもそうなるように行動してほしいものだし、そうなるのではないかと思っている。


末筆ながら、故人のご冥福を心からお祈りします。

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