インフルエンザオペレーション
午後3の時。
ふと見るとマナーモードにしていたスマホの画面に奥さんの名前。
普段、仕事中に電話してくることなんてない。
何か事件か?と思って慌てて出る。
『もしもーし』
なんか明るくて軽い第一声。
なんだ。
事件とかじゃないのか。
『たいきが38.3℃だって。』
事件だった。
『これから迎えにいってきまーす。』
『わかった。とりあえず俺もすぐ帰るよ。』
何をどう段取りしてどうするかとかはまだ考えてないけど、のはなとたいき抱えたら詰むに決まってるので即決。
いずれにせよ二人いて困ることはあるまい。
電車の中でも報告が来る。
『ご飯はほとんど食べてないらしい』
『お昼寝のあとで熱が出たらしい』
『機嫌はいい』
『のはなは今日予防接種を打ったので機嫌が悪い』
こちらも近くの小児科の予約をとって報告。
待ち人数が多くて明らかに診療時間過ぎるけど看てくれるとのこと。
近くの薬局はその辺の病院がしまるまでは閉店しないとのこと。
まあ便利な世の中だ。
家につくまでにこれだけ情報交換できていればスムーズだ。
家につくとたいきはソファで、のはなを抱っこしたお母さんのとなりに座ってアイスクリームを食べていた。
病院までたいきを抱っこして行く。
不機嫌とか苦しそうとかはないけど、テンションは高くない。
「今日はごはん食べた?」
一応、ごはんを三口食べたと保育園からは聞いている。
『たべなかった』
「お腹すいてる?」
『おなかしゅいてない』
「頭いたい?」
『いたくない』
うん。
まあ、そんな感じだろう。
診察直前に、保育園でインフルエンザが流行ってるか聞くのを忘れたことに気づく。
一応、土曜日のお遊戯会のときには、先生がまだ流行ってないと言っていたけど。
それに、奥さんが私になにも言わなかったってことはなにも流行ってないってことではあるだろう。
しかし、確認は必要だ。
この情報があるかないかで診断が変わってくるのだ。
あわてて奥さんにLINE。
なにも流行ってないらしい。
念のため保育園にも電話。
同じ回答。
しかしまあ、心配ということで例の細い棒を鼻に突っ込む検査。
たいきは泣かずにがんばれた。
一杯ほめたら嬉しそうにほほえんだ。
さて。
のはなと隔離しなきゃいけないはず。
とにかく毎日寝てる奥さんの寝室から一歩も出さない、しかないだろう。
あとは何か食べてもらって薬を飲む。
はじめての粉薬だから、どうするか。
チョコレートアイスに混ぜるか、オレンジジュースにするか。
帰り道、たいきを抱っこしながら考える。
まあ、本人に相談するしかない。
「たいき。おうちに帰ったらしばらくごろーんってしてなきゃいけない。明日もなんだ。iPadはどこでも見てていいよ。お父さんのお部屋と、お母さんのお部屋と、テレビのお部屋、どこがいい?」
『おかーしゃんのおへやがいい』
よしよし。
「あとはねぇ、お腹すいてるっけ?」
『しゅいてない』
「アイス食べたいかな?なんのアイスがいい?」
『うーん。ぱぴこ。』
「パピコかぁ。いいよ。お父さん、パピコ買ってきてあげる。」
『たいちゃんねぇ、あのねぇ、ふどうのぱぴこがたべたくなっちゃった』
そんなのあるのか。
「ジュースも買ってきてやろう。オレンジジュースが好きかな。つめたーいオレンジジュースだよ。」
『おれんじじゅーしゅ。しゅき。』
たいきを家においてからコンビニ。
残念ながら近くのコンビニにはブドウのパピコがなかったので、普通のパピコやジャンボチョコモナカなんかをいくつかとオレンジジュースと、たいきが熊本で喜んでのんでいた飲むヨーグルトを買った。
家に帰ってくるとのはながギャン泣きしてる。
奥さんはたいきを見てくれてるからこれはしかたない。
奥さんがそのままたいきにパピコと薬をやってくれて。
保育園に事情を説明する電話を入れて、ぼーっとのはなを抱っこしてたら
『食べられるうちにごはん食べちゃって。待たなくていいから。』
と怒られた。
で、なんだかんだ二人でごはんを食べて。
念のためのはなを少しでもたいきから遠ざけるために私とのはなはリビングで寝ることにしたので、布団を移動させて。
たいきの部屋に行ったら手指をアルコールで消毒するとか、都度マスクを交換するとか、私が気づかないことを奥さんはよく気づく。
ていうか、消毒アルコールがうちにあるの知らなかった。
用意周到とはこのこと。
さすがだ。
病院で聞いた話の引き継ぎや、何かあったときの相談なんかしてたらあっという間に22時。
とにかくのはなにうつらないといい。
たいきもはやく回復してほしい。
苦しそうにはしてないから、それが救い。
お薬がちゃんと効きますように。
