ボールプール事件
近くのショッピングセンターのキッズスペースの片隅に、いわゆるボールプールというやつがある。
直径2メートルぐらいのビニール製の空気で膨らませたプールに野球のボールぐらいのプラスチックだかゴムだかでできたボールが山ほど入ってるやつ。
たいきはこれが大好き。
日曜日は朝から
「たいちゃんぼーるぷーるにいきたい!」
といっていた。
行ったら行ったで他の遊具でもいやというほど遊ぶのだけど、やっぱり一番すきなのはボールプールらしい。
たいきは引っ込み思案なのか、それともそういうルールを保育園で教わっているのか、他の子が遊んでいるときは比較的外で待っていることが多い。
「じゅんばん!」
というやつだ。
他の子がいなくなるとボールプールに入って、ボールを投げたり転がったりしてはしゃぎまわる。
それはそれは楽しそうだ。
私は一緒に入りはせずに、プールの外のすぐそばに座っている。
ボールが飛んでくれば投げ返すし、呼ばれればもっと近くに行く。
ボールプールで遊んでいるときに事件が起きた。
たいきより少しだけ大柄な男の子が入ってきた。
仲良く遊べるかなと思って見ていると、その子がボールを両手に持ったかと思うと、たいきの顔に投げつけ始めた。
投げつけるといってもそんなに強い力ではない。
痛いような勢いではないけど、不愉快には違いない。
たいきはいくつかその子にボールを投げ返したけど、顔には届かない。
するとまたその子がいくつもボールを投げて、たいきの顔に当て始めた。
たいきはびっくりしたのか、しばらくボールを投げ返そうとしていたけれど、あきらめてこちらを振り向いた。
困ったように笑っている。
どうしていいかわからないのだ。
「たいき、こっちにおいで。」
たいきは私に抱きついてきた。
「いやなお兄ちゃんがいたね。」
たいきはうなずいた。
「いやなお兄ちゃんとは一緒に遊ばなくていいよ。泣かなかったんだね。泣いたっていいんだよ。」
抱きしめて頭をなでてやると、たいきはほっとしたようだった。
どこかで見ていたのか、それとも見ていなかったのか知らないけど、その男の子のお父さんらしき男性が来て、まだそこで遊びたそうにしている男の子を抱えてあっちにいってしまった。
見ていたんだとしたら、まあ、その程度が一番適切な対応だろう。
子供の遊びだから、少々のことで手出しもしないし、口出しもしない。
これはまさに少々のことだ。
なんでこういうことが起こったかといえば、私がたいきにべったりくっついて遊んでいなかったからなわけで、こうやって色んなことが起こるのが色んな人がいるところで遊ぶということだ。
保育園だったら先生が止めてくれるのだろうけど、ここではそうはならなかったから、たいきはどうしていいかわからなかったのだろう。
たいきはやり返そうとしたけど、ぶったりはしなかったし、泣きもしなかった。
そういう様子が見られたことに価値がある。
保育園の先生方がどんな保育をしてくださっているのかが透けて見えるようだ。
ありがたい。
そして、いやな人とは遊ばなくいいと教えることができたし、困ったときにちゃんとお父さんのところに逃げてきていいことも教えることができた。
そのことも、とてもよかった。
まだ幼児といっていいその子が悪いわけでもない。
しかしまあ、そうは言っても腹は立つ。
たいきももうちょっとやんちゃでもいいと思うのだけど、たいきはおっとり育っているようだ。
たいきはその後、その男の子がいなくなったボールプールで遊ぶことはせずに、他の遊具に遊びにいった。
ボールプールがつまらなくなってしまったのかもしれないし、ちょっと嫌いになったかもしれない。
来週はどうだろう。
また
「ぼーるぷーるいきたい!」
と言うだろうか。

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