保育園のお友達が道路で泣いていた

日記

駅からの帰り道、誰も乗っていないベビーカーが向こうから歩いてきた。

押している人は手と脳天しか見えない。

子供だ。


道はそれなりに車が通る道で、歩道は狭くてガタガタ。

その上ガードレールもなくて、大人も結構あるいている。

ぶつかったり避け損なったりして道に飛び出したら大変なところなのに、近くに親の姿は見えない。

改めて見ると、かわいらしい小さな手と、さらさらのつややかできれいな髪。

ん?

なんか見覚えがある。

近くに来たので顔を見ると知っている女の子だった。


保育園の、たいきのふたつかみっつ上のお姉さんで、たいきよりひとつ下の妹がいる。

よくたいきと最後まで保育園に残っていて、お迎えのときに何度も顔を会わせている。

最初は私のことを警戒していて、私が来ると妹を抱き寄せて私に近づかないようにしていた。

毎日のように挨拶しているうちに、バイバイのタッチまでしてくれるようになった。

お母さんはもう半年くらい会ってないし、あんまり親しくはないけど、何度も挨拶はしてる。

とても明るくてきちんとした感じの方だ。


「こんにちは、ゆきちゃん。お母さんはどうしたの?」

と言うと、ゆきちゃんは後ろを振り返った。

見ると、大分後ろの方にお母さんが立ってるのが見えた。

足元に見慣れた1才児が寝転んでる。

妹のしいちゃんだ。

最近はお迎えで会うとおもちゃを渡しに来てくれるようになった。

すっかり仲良しになってしまった。

よく見るとお母さんは小さな赤ん坊を抱っこ紐で抱えているようだ。

多分まだ2ヶ月くらいだろう。

ゆきちゃんとベビーカーを少し安全なところに移動させて、

「ここで待っててね」

と言うとゆきちゃんは、うん、と素直にうなずいた。


お母さんが遠くから会釈するので会釈を返しながら近くに行く。

しいちゃんはあいかわらずなにかを主張したくて泣いている。

少し気分を変えてもらおう。

あえてしいちゃんが見えないふりをしてお母さんと挨拶を交わし、出産のお祝いを言って、目を下に向けるとしいちゃんが道路に座ってこちらを見ていた。

さっきまで泣いていたのだけど、お母さんと私が無視して話してるので「おや?」と思って泣き止んだのだ。

「しいちゃん、こんにちは。」

まだこんにちはと返せはしないけど、反応はした。

私も地面に座り込んで話しかける。

「泣いてるんだね。」

しいちゃんが怒ったような顔でうなずいた。

まあ、泣いてる理由は聞かなくてもわかる。

空のベビーカーに、お母さんの抱っこひも。

しいちゃんは抱っこして欲しいのだ。

「抱っこがいいのかな」

しいちゃんは怒ったような顔のまま、さっきよりも少し大きめにうなずいた。

「たいちゃんのお父さんが抱っこしてあげようか。」

しいちゃんは少しうなずいて、両手をこちらに差し伸べた。


一応、お母さんに確認して許可をもらって、抱き上げると、素直に抱っこされてくれた。

「もう、すみません」

お母さんが笑顔で恐縮して見せるのに笑って答えて、しいちゃんに話しかける。

「しいちゃん、お姉ちゃんになったのかぁ。でもしいちゃんも抱っこして欲しいもんねぇ。」

どうしようかな。

まさか家までついて行くわけにもいかないし。

考えながら顔を見ると、笑っている。

目鼻立ちのくっきりした、賢そうな顔立ちがりりしく見えた。


とりあえず抱っこしたままお母さんと連れだってゆきちゃんのところに行くと、ゆきちゃんも笑った。

しいちゃんが私に抱かれているのがおかしいのだろう。

「しいちゃん、お姉ちゃんがベビーカー押してくれるみたいだよ。しいちゃん、ベビーカーに乗れるかい?」

しいちゃんは、今度は笑顔でうなずいた。

ベビーカーに載せようとすると少し嫌がった。

地面に降りて、自分で乗り込みたいのだ。

私はこの子のことはお腹のなかにいる頃から知っているのだけど、そうか、もうこんなに大きくなったのかと思うと、つい笑みがこぼれる。

地面に下ろしてやると、覚束ないながらなんとか自分でベビーカーに乗り込んでちゃんと座った。

「しいちゃん、すごいなぁ。自分でベビーカーにのれるのか!」

しいちゃんは得意そうに私の顔を見た。

よし。

これで機嫌はばっちりだ。


お母さんに聞くとちゃんとベルトがあるというので、ゆきちゃんに教えてもらいながらベルトをつける。

少し手間取ったけど、その間も、しいちゃんはちゃんと大人しくしていた。

「よーし!しいちゃん、もう大丈夫だね!」

ちゃんと待っていてくれたゆきちゃんにも声をかける。

「ゆきちゃんはしいちゃんのベビーカー押してあげるんだね。すごいなぁ!」

頭をなでてやると、恥ずかしがり屋さんのゆきちゃんもはにかんだように笑った。


お母さんも悪びれない様子。

明るく丁寧にお礼を言われて、いいんですよと言った。

「うちももうすぐ二人目なんで、いずれ私が困ってたら助けてください。」

お母さんが笑って快諾してくれて、ゆきちゃんとしいちゃんとばいばーい、と手をふって。


これにて一件落着!

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