つわりは何のためにあるのか~父親の育児は始まっている
奥さんのつわりがひどい。
昼過ぎまでは調子も悪くないようだけど、夕方から吐き気が止まらないらしい。
毎日ではないけど、ときどき吐いてもいるようだ。
こればかりは代わってあげることもできないし、何か、楽にしてあげるようなことができればいいのだけど、残念ながらそういう方策もない。
完全にお手上げ。
手も足もでない。
「つわりって何のためにあるんだろう」
腹立ち紛れに奥さんが呟いた。
「つわり なんのため」とか検索。
お腹の子供を、母体が異物だと思って吐き気を催しているらしいとか、子供を守るために安静にするように体調が悪くなるんじゃないかとか、色んなことを言う人がいるけど、決定打はないらしい。
嘔吐するのだって吐き気に耐えるのだって体力を使うから、女性が「安静にしてほしいって子供がいってるのかな」なんて考えるのはいいとして、男である私が漫然とそんな風に考えるのはなんか違うと思う。
ただただ、代わってあげることができなくて申し訳ないとしか思えない。
しかし、つわりで奥さんが動けないのは見ようによっては大きなチャンスだ。
私はひとり目の子供が生まれてこのかた、ずいぶん育児も家事もやって来た自負はある。
しかし、それはあくまで奥さんと二人でやって来たこと。
私ひとりでやっていることもたくさんあるけど、奥さんに任せきりのパートも同じくらいあるのだ。
そこも含めて、今だからこそ、家のことも子供のことも全部やれるのではないか。
いや、むしろ今だからこそ、それをやっておくべきなのではないか。
子供がいなかった頃の家事が10だとすると、子供がひとり増えたことでそれは単純計算でも人数が1.5倍になったわけだから15になった。
実際には自分でなにもできない子供が増えたわけで、しかも、大人は目を離しても死なないけど子供は目を離すと大ケガをしたり死んだりするのだから、子供一人にかかる手間は、大人一人にかかる手間の倍くらいはある。
そういう意味では夫婦だけの時の家事を10とすると、子供が生まれてからの家事というか、日常生活の生活の負担は20くらいになっているかもしれない。
ワンオペの専業主婦の人は、出産で戦闘力が半減して、さらに夜間授乳対応で日中の戦闘力が半減した状態が続くなかで、この、倍になった家事を一人でやるので、実質的な大変さは4倍とかそれ以上になっている。
それに気づかずに夫が今まで通りの戦闘力ど今まで通りの外の仕事をやっていると、生涯恨まれることになるわけど、これはやむを得ないだろう。
うちの場合はこの20のタスクをいまは二人で10ずつやっているわけで、しかも夜間取引対応も無くなって戦闘力は普通に戻っているからいるから、そんなに大変なことはない。
しかし、ここに子供がひとり増えると、またタスクが5~10増えることになる。
さらに、上の子はそれを邪魔するパワーばかりがぐんぐん伸びている。
実質、今の20の家事の量は、出産直後から一年くらいは35とか40になると思われる。
その半分をひとりでやるだけでも17とか20やらなきゃならないし、その頃奥さんの戦闘力が落ちていることを考えれば、25とか30くらいやっても足りないかもしれない。
今は10しかやっていないのに、だ。
これはなかなか大変だ。
子供が生まれて神経を使わなきゃいけないときに、いきなり家事が倍以上になったら、はっきり言って参ってしまうし事故だって起こしかねない。
だから、いま、できる限り20の家事を一人でやってみておくべきなのだ。
実際、子供が生まれたら奥さんは生まれたばかりの子供にかかりきりにならざるを得ない。これが10の家事だ。
残りの家事。
つまり、上の子を見ながら、上の子と奥さんと自分のケアをしつつ、下の子の世話もちょいちょいやる。
いまの家事とは大変さが格段に違うはずだけど、それは、まぎれもなく夫である私の役割だ。
だから、つわりは、夫が、子供が生まれたあとにやらなければならない家事育児を完璧に覚える時間を作るためにあるのではないかと、私は思うことにした。
そんなことのために苦しい思いをさせて申し訳ないけど、その分、今の家事はこちらでやる。
そしてそれが、こどもが生まれたあとの負担増を引き受けるための練習と準備運動にもなっている。
むしろ、いまから全力で取り組んでおかなければいけない。
その練習の期間は、ほんの数ヵ月しかないのだ。
しかも、今はまだ子供、奥さん、自分の三人分しか家事がない。
子供が生まれたら、ここに新しい子供のケアも、これだけは奥さんメインでやってもらうにせよ、ある程度は増えるし、何より乳児の世話は繊細な命を扱う作業でミスは許されない。
今の三人分の家事を完璧にできるようになっていなければ、なかなか、無事故はもちろん、余裕をもって新生児のケアまではできないだろう。
どこかの芸人が「父親の育児は2才からが本番」なんて言っていたようだけど、それはとんでもない思い違いだ。
父親の育児は、妊娠発覚からすでに本番が始まっている。
妊娠期間をどう過ごすかで、もっとも大変な産後数ヵ月の過ごし方や事故の発生リスクが大きく変わってきてしまう。
のんびり構えている場合ではないのだ。
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