おかあさんは、たいきが大好きだよ

日記

たいきがついさっき目を覚ました。

23時過ぎ。

こんなツイートをした直後だった。

フラグってやつだったかもしれない。

お母さんのとこに行っておっぱいをもらいたい、と大声でわめきはじめた。


奥さんの具合がどうもよろしくない。

この時間なら逆に、起こしちゃって授乳をお願いしてもそのあとしっかり眠れるから、起こしちゃってもいい。

むしろまだ起きてるかもしれない、

とは思ったのだけど。

どうも体調が優れないと言っていたし、明日は朝早いとも言っていたし。

申し訳ないけどたいきには我慢してもらうことにする。


『お母さんは具合が悪くてね』

「いやー!おかあしゃんー!」

『ちょっと辛そうなんだよ』

「おとーしゃん、あっちいって!」

『だから寝かしておいてあげよう』

「おかーしゃーん!」

うん。会話にならん。

しかし声が大きい。

『もう、こんな時間…』

こんな時間だから大きい声を出すのはやめて、って言おうとしたのだけど。

『こんなじかん』

はキーワードだった。

ねないこだれだの冒頭

こんなじかんにおきてるのはだれだ?

を思い出させてしまった。

「お、おっ、おばけ、こないよ!おかあしゃん、いくの!おばけは、こないの!」

うん。

『お化けは来ないよ。大丈夫だよ。ごめんね。』

「おばけ、こないよ!うわーん!」

しかし、明らかにトーンダウンした。

そして、水が飲みたいと言って、水を飲んだらすっかり落ち着いて、布団に寝そべった。


「べーとーべん、きく」

そうか。

ちょっと時間はかかったけど、バックハウス演奏のピアノソナタ『熱情』を探してかけてやる。

寝かしつけで、一番聞かせてた曲。

その頃はルドルフ・ゼルキンの演奏だったけど、バックハウスも系統としては同じ。

過度な装飾をせず、演奏者の感情を排して、ひたすら楽譜に向き合うような演奏。

ピアノの音が流れ始めるとたいきはすっかりおとなしくなって、目をつぶった。

やれやれ。

そろそろ断乳かなぁ、とも思う。

まだまだおっぱいは欲しかろう。

しかしいずれは来るのだ。

もう、そう遠くない未来。

そうだ。

言葉が通じるようになったたいきに、おっぱいを飲んでる今、伝えなきゃいけないことがある。

どうしても伝えておきたいことがある。

まどろむたいきの耳元に口を寄せた


たいき。

お母さんはね、たいき君が大好きだよ。

今はいっぱいおっぱいもくれるね。

よーくおぼえておくんだよ。

いつかおっぱいを飲まなくなっても。

おっぱいのことを忘れちゃっても。

今こうやってお母さんがたいき君のために一生懸命おっぱいをくれる。

お母さんはたいき君のことが大好きで大好きで。

その気持ちがずーっとたいき君の胸に残るといいな。

あったかい気持ちを、一杯貰ってるね。

たいき君も、お母さんのことが大好きだね。

大丈夫。

お母さんは、本当に、たいき君のことをだぁーい好きなんだからね…


静かに流れるピアノに、たいきのねいきが混じり始めた。

涙の跡を拭いてやって、頭を撫でた。

ぐっすり眠っている。

あのね、お父さんもね、たいきのことが大好きなんだよ。

忘れていいけど。

たいきが、楽しい夢を見られますように。

保育園の入り口のひまわり。12月だというのに、まだ咲いている