まーまーと!とりえほん!
朝っぱらから、たいきがおもちゃ箱をひっくり返した。
お母さんはとっくに家を出て、ご飯も終わって、そろそろ着替えようかという時間。
もう、あんまり遊ぶ時間はない。
まあ、ひっくり返したっていうか、たいきにとってはおもちゃを遊ぶ体制にセットしたということで、嫌がらせで散らかしたわけではない。
最近のお気に入り、お母さんが買ってくれたおままごとセットだ。
プラスチック製の食器、調理器具の類いと、リンゴやらバナナやらスイカやらといった大量の食材。
これは全部二つのパーツになっていて、マジックテープでくっついているのをおもちゃの包丁で切って遊ぶようになっている。
左手に玉ねぎ、右手に包丁を持ったたいきがこっちを向く。
「まーまーと!」
うーん。
ママはもういないよ。
「お母さんはもうおでかけしたよ」
「まーまーと!」
たいきは言いながら真剣におもちゃをかき回している。
「お母さんが帰ってきたらまた一緒に遊ぼうね。」
これに付き合い続けるわけにはいかない。
出る時間は刻々と迫っている。
遊んでいるならとりあえず私の支度をしよう。
とりあえずトイレだ。
「たいき、お父さんも支度するから、とりあえずトイレいってくるね。いい?」
「いーよー。」
たいきは相変わらずおもちゃをかき混ぜながら、こっちを向くこともなく言った。
お許しが出たのでトイレへ。
座っているとたいきがトイレのドアの前まで歩いてきてノックした。
「まーまーと!」
はいはい。
朝からこんなにお母さん呼ぶの、超珍しい。
どうしたかなと思って、とりあえずドアを開ける。
たいきがおもちゃを持って、得意気にこっちに見せた。
「まーまーと!!」
…
ああ。
確かに、たまねぎと包丁だけじゃお料理ごっこはできない。
たいきが「まーまーと!」と呼んで探していたのは「まないた」だった。
たいきをだっこして表に出ると、今日もいい天気。
少し肌寒いけど、一度着せた上着は脱がれてしまった。
頑として着てくれない。
「寒くない?」
「しゃぶくない」
ふーん。
まあ、子供は風の子っていうしなぁ。
着ないもんは仕方ない。
「とりえほん、よみたい!」
とたいきが言い出した。
「鳥の絵本があるの?」
「ちがう!とりえほん、よみたい!」
「うーん、とりの、絵本?」
「ちがう!!とーりぅ、えっほん!」
ああ、最近保育園で人気の絵本を思い出した。
恐竜の飛び出す絵本だ。
「あー!恐竜の絵本ね。」
「うん!とーりゆ、えほん!」
そんなこんなで今日も元気に登園。
たいきにとって素晴らしい一日でありますように!
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