おかあしゃんいないねえ

日記

今日はちょっとギリギリのお迎えで、保育園にはほんの少ししかいられなかった。

ここのところ毎日さわっていた、園の入り口に置いてあるカボチャ。

昨日まではこんな感じ。

今日もさわりたいと言うのでかごを見るとすべてのカボチャが真っ二つに切られている。

なんてことだ。

たいきはショックを受けている。

どうやら私がやったと思ったらしい。

「おとーしゃん、しゃわらないで!」

と、えらい剣幕で怒りはじめた。

そして悲しそうな顔でひとつひとつ切り口を眺め、全部をふたつずつセットにして直していった。

お父さんがやった訳じゃないんだけどなぁ。

まあ、しかたない。


今日は曇っていて月も見えない。

なぜかさがわさんぶーぶーもにゃんにゃんぶーぶーもいない。

他愛ないことをしゃべりながらの家路。

「おとーしゃん、べんべんべーん!して!」

「いいよ。べんべんべーん!」

「えへへ」

「べんべんべーん!って、これなあに?」

「うふふ、わかんにゃい」

他愛なさ過ぎか。


今日は奥さんは仕事で遅い。

家にたどり着いて、まあ、お母さんがいないことは私は知っていたけど、たいきはお母さんがいると思っている。

「今日はお母さん仕事で遅いっていってたよ。」

「おかあしゃん、いる!」

「どうかなぁ。いるかなぁ。」

「おかあしゃん、いるよ!」

たいきがドアのチャイムをならす。

ピンポーン。

たいきは不安そうにじっとインターホンをじっと見つめている。

しばらくしても誰も出てこない。

どうするかなと思って顔を見ていた。

と、たいきがかくんと首をかしげた。

「おかあしゃん、いないねえ!」

おお。

意外とと元気だ。

普通に気を取り直した。

この前は私が鍵を取り出すと抵抗したのに。

暴れても中からお母さんが出てくるわけじゃないことを学んだらしい。


鍵を開けて、中に入って。

あとはしばらく動画をみたりして、お風呂に入って、寝かしつけ。

昨日届いた小澤征爾指揮のマーラーの巨人(交響曲一番)のレコードをかける。

第四楽章、一番派手で華やかなところを聞きながら抱っこして寝かしつけ。

おとなしくはしてたけどさすがに眠らなかった。

たいきをベットに横たえて、レコードを変える。

ベートーヴェンのピアノソナタ11番。

ベートーヴェンの華やかで豊かな音列が、バックハウスの淡々とした指使いから溢れる。

「おかあしゃんは?」

「おかあさんはもうすぐかえってくるよ」

「おかあしゃん、かえってくるねえ」

「うん、ちゃんとたいきくんのところに帰ってくるよ」

ふにゃふにゃいいながらまぶたが落ちてくる。

睡魔に抵抗するように顔を擦ったりごろごろしたりしていたけれど、第二楽章が始まる頃には寝息をたてはじめた。

おやすみ。

次に目を覚ますときには大好きなお母さんが隣にいるかな。

それまで、いい夢を見ててね。