一生分の暴力

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たいきがカラーマーカーと落書き帳を持ってきて

「かばくん!」

と言った。

あのね、お父さんは小学校の頃、図画工作はずっと「2」だったんだよ。

アンパンマンだけは一生懸命練習して、アンパンマンに見えるようになったけど。

それはさ、あんな、誰でも書けるような線で、魅力的なキャラクターを産み出したやなせたかし先生が偉いわけ。

まあ、ご要望とあればお父さん頑張るけどね。


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どう見ても、かばくん…??

いや、かばにも見えないけど、かば以外のものにも見えない。

たいきはそれなりに「きゃっきゃっ」と喜んでくれた。

お母さんが近くにいた。

お母さんは手先も器用だし、絵も私よりははるかにうまい。

お母さんにバトンタッチしよう。

そう思っただけなんだ。


「ええい、こんなもん、やってられるか!」

そういって、少し強くマーカーを座布団の上に放り投げた。

おどけて見せたつもり。

やけになってみせただけのつもり。

冗談のつもり。

でも、たいきにはそんなことはわからない。

一瞬でたいきの表情が凍りついた。


わたしも奥さんも、すぐに気づいた。

すぐに奥さんがたいきに話しかけた。

「おー。よしよし、大丈夫だよ。今のはお父さんが悪い!」

私もあわてて、あやまりながらたいきの頭を撫でようとする。

「あー、たいき、ごめんね。ごめんね。おとうさんがいけない。おとうさんがいけなかった。」

たいきは私と目を会わせずに、少しにげた。

必死で頭を下げる。

「ごめん。ごめんね。」

たいきは、泣くでもない。

笑うでもない。

固まった表情のまま、私から体を離して、何かおもちゃをいじり始めた。

現実逃避してるように見えた。

「とーしゃん、や」

と言ったかもしれないし、言わなかったような気もする。

いや、多分言わなかったと思う。

私は、そう言ってほしかった。

でも、たいきにはそんなことを言う勇気も余裕もなかった。

緊張した表情がまるでとれない。


これは、あれだ。

ちゃんとあやまらなきゃいけないやつだ。

そして、抱き締めたり撫でたりしてごまかしたらいけないやつだ。

暴力と可愛がりをセットにすると、子供は混乱するし、自尊心を傷つける。

それは、身をもって知っている。

咄嗟にたいきから少し体を離すと、お母さんもちゃんとわかってくれて、たいきを抱き締めてくれた。

そして私を睨み付ける。

「おとうさん、だめでしょ」

たいきが怯えるような大きい声はもちろん出さない。

でもはっきりと、たいきにも伝わるように私を非難する。

「たいきくん、本当にごめんね。」

泣きたい気持ちだった。


5分か、10分か後には、たいきはそんなことをすっかり忘れたように私の膝にのって絵本を読んでくれとせがんでくれた。

よかった。

もう一度謝って、今度は頭をぐしゃぐしゃになでて、抱き締めた。

やっぱりこうしたくなってしまう。

ダメかもしれないけど、やってしまった。

とにかくもう、一生分の暴力はこれでふるった。

あの、たいきの固まった表情は一生忘れたくない。

忘れちゃいけない。

二度と同じ過ちは繰り返さないと誓う。

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