たいきは月に手を伸ばした

お父さんであること

保育園からの帰り道。

月が綺麗だった。

まんまるなお月様は、絵本の「おつきさまこんばんは」よろしく、夕空に浮かんでいた。

たいきは月に手を伸ばした。

まるでお月さまにさわりたがってるみたいに。

いや、きっとさわりたかったんだろう。

ひとしきり手を伸ばしてさわれないとわかると「いや」と言った。


お月さまはね、遠くにいるんだよ。

あんなに近くに見えるけど、遠くにいるんだよ。

でもいつもたいきのことを見てくれてるよ。

ほら、ずっとついてきてくれるでしょう?

たいきくんが転ばないかな?

たいきくんが困らないかな?

たいきくんが迷わないかな?

って、ずっと見ていてくれるんだよ。

お父さんが一緒にいるけど、お月さまも心配して一緒に来てくれてるね。

お月さまがいればずっと安心だね。

ほら、お月さまにこんにちはって。

言えるかな?


たいきは月を見つめて、もう一度手を伸ばした。

やっぱり届かない。

そしてひとことつぶやいた。

「あんぱんまん」

んー

ちょっと悩んだけど訂正はしなかった。

ひょっとしたら、丸いからじゃなくて、ずっと見守ってくれるからあんぱんまんと呼んだのかもしれない。

暗い夜も、月がたいきの道を照らしてくれますように。