自慢話。今日、私はとてもいい人だった。
あまりにも嬉しいことがあったので忘れないうちに記事にする。

今朝、いつものように電車に乗った。
時間が遅めで、しかも下りの電車なので車内は空席がちらほら。立ってる人も2、3人いる程度。

私は体が大きいので二つ以上席が空いてないと座らない。
今日も、そこまで空いてはいなかったのでドアのわきにたってスマホをいじり始めた。
電車が、急行に追い抜かれる駅についた。ここで急行に乗り換える人が多く、みんな席を立つ。
と、私の目の前の三人がけの席が、二人分空いた。
座ろうかなと体を動かしたとき、ふと目の前のベビーカー・車椅子スペースを見るとベビーカー連れのお母さんと目があった。
アイコンタクトで「座りますか?」と聞くと、そのお母さんは軽く会釈して電車を降りていった。どうも、急行に乗り換えるらしい。
やれやれと思って、席に座る。
10分ほどして、次は大きなターミナル駅。あと2分くらいで着く。私は、今日はその先までいくのだけど、つい習慣でスマホから目をあげた。
と、さっきのベビーカー・車椅子スペースに小さなおもちゃが落ちていた。

席を立って拾い上げると、布でできた絵本。ガサガサ音がするフィルムが中に入ってる。0歳児がよく持っているやつだ。ベビーカーなんかに結びつけるための小さなストラップもついている。
これは、さっきのお母さんが落としたんじゃなかろうか。もっと見てあげていればその場で気づいて渡せたのに、と少し後悔。
子供のお出かけ用おもちゃがないと、お出掛けは大変。子供にとっても大人にとっても一大事、いや、大事件だ。
次のターミナル駅はこの路線の落とし物集約駅。それに、あのお母さんもあの駅で急行に乗り換えたということは、十中八九この駅で乗り換えか、この駅に用があるにちがいない。
最悪でも、帰りに落とし物センターに寄ってくれれば、手元にかえる可能性は低くない。幸い今日は仕事の予定はつまっていない。
途中下車して届けることに決めた。
落とし物センターに説明することを確認しながら電車を降りる。
確か私の乗った駅で一緒に乗り込んだ気がする。いや、ここはあやふやだ。ひとつ次の駅で乗ってきたのかもしれない。
車両番号、ドア番号を確認して、ホームに降り、エスカレーターに乗る。
振り返ると、今降りたドアのところでまたベビーカーが目にはいる。なんだかドアのところでまごまごしてる。乗ろうとしてるのに誰かが邪魔で乗れないのか。
手助けしたいけど、エスカレーターに乗っちゃったし。ああ、まただ。もう少し回りを見ていれば、もう少しだけベビーカーに親切にできたのに。おれは思うばっかりで何にもできない。
いや、まてよ、いま降りた電車、そんなに混んでるはずはないんだけど。
まさか!
と思って2メートルほど上がってしまったエレベーターをかけ降りる。足をくじきも転げ落ちもしなかったのは、40才、100キロ弱、慢性運動不足の中年男性にしてはウルトラCだ。
「あの、これ探してますか?」
絵本を差し出す。
「あ!あった!そうです!ありがとうございます😃◯◯ちゃん、ほら、よかったね!」
子供が不思議そうな、うれしそうな、その中間くらいの顔で受けとった。
「よかった。じゃあ僕はこれで」
といって電車に乗ろうとする目の前でドアがしまる。センターに届けるためにわざわざ降りたのがばれてしまった。
「電車、大丈夫ですか💦」
「大丈夫ですよ」
と笑顔で答える。なにしろ落とし物センターまでいってたら15分はかかるところだったのだ。いまの電車に乗れないくらい、なんでもない。
お母さんはとても恐縮しつつ、見えなくなるまでお辞儀を繰り返し、最後は子供の手をとって笑顔でバイバイさせてくれていた。私もお母さんにお辞儀をし、子供に手を振り返したのだった。
今日はヒーロー気分、味わっていいよね。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません