もう少しだけそのままでいて

お父さんであること

カーテンを揺らして暖かい風が吹き込んでくる。

部屋は掃除機かけたから清潔だけど絵本やおもちゃが散らばってる。

もう3時になるというのに奥さんと子供は昼前からのお昼寝でまだ寝てる。

お昼ご飯作ってあげたいけど起こしちゃうのもなぁ。

小さめの音でモーツァルトのセレナーデを聞く。

洗い物もしちゃったし。

洗濯物ももうないし。

もう遊ばなくなったおもちゃの整理でもしようか。

いつまでこんな時間が過ごせるかなぁ。

絵本を読んでやって、抱っこして、ご飯食べさせて。

お昼寝してるふたりにふとんをかけてやって。

一生分の宝物を今もらってるんだなぁ。

私が成長して来たのと同じように

私がこれから老いて行くのと同じように

彼は大きくなって行くんだなぁ。

子供とともにうちにやって来たこの満ち足りた時間は

永遠ではないんだなぁ。

ずっとこのままでいられたらいいのに。

この大切な時間を、あの子は忘れちゃうだろう。

いいんだ、忘れちゃって。

いっぱい抱きしめたことも

「おいち!」って首を傾げて笑顔でご飯を食べてくれたことも

お昼寝の頭を撫でた柔らかい髪の感触も

お父さんとお母さんはふたりで大切に守って生きていく。

今聞いてるレコードを聴くたびに思い出す。

でも、もうしばらく、そうやってお父さんとお母さんが大好きな君でいてください。