赤ちゃんに夜のBGMとして聞かせたい音楽 ~管弦楽組曲(バッハ) 聴き比べ *ひげじいさんとひーじーさん

子供に聞かせたい音楽

①指揮:パブロ=カザルス 演奏:マールボロ音楽祭管弦楽団 録音:不詳

②指揮:ベイヌム 演奏;アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団 録音:1955年

J.S.バッハとあえてフルネームでいわなくても、バッハと言えばもはやこのバッハか、IOCの会長ぐらいしか日本人にはなじみがない。バッハの音楽は、基本的に静かで、無害で、ちょっと哀愁を帯びてはいるものの、さらりと聞き流せる音楽が多いと思う。子供に、すこし静かに過ごしたい時間にBGMとして聞かせるのにはちょうどいい。

そういえば、新世紀エヴァンゲリオンの劇場版でシンジが弾いていたチェロの曲。あれは、バッハの無伴奏チェロ組曲の最初の曲なのだけれど、この、バッハの無伴奏チェロを初めてちゃんと弾いたのがこのカザルスという人で、このひとは、指揮者としてよりも、チェロの演奏方法を開発して、チェロという楽器の表現の幅を大きく拡大させたことで良く知られている。

クラシックというと、すごいスピードでどーん、ばーん、じゃーんと大きな音がしたかとおもうと、聞こえないような小さい音になってテンポも遅くなったりなんかして、それがゲイジュツ的、みたいな世界らしくて、なんかとっつきにくい、なんて思う人が多いようだけれども、バッハの音楽はそうではない。

まだチェンバロというこの時代の楽器が音の強弱をつけられない仕様だったことも手伝って、また、今と違ってオーケストラの編成も15人とかそのぐらい(今は80人ぐらいいる)だったので、音の強弱はそんなにはげしくないし、なにより、テンポは基本的に一定になっている。少年マガジンの長寿漫画だった「コータローまかりとおる」では主人公がバッハを運動のBGMに使っていたぐらい。

この、管弦楽組曲というのは第1番から第4番まであって、それぞれ、5曲~7曲の2分~8分ぐらいの小さい曲で構成されている。ちなみに、有名な「G線上のアリア」という曲は、このバッハの管弦楽組曲第三番の2曲目。どれも、あまりだらだらと一つの曲が続くことなく、とんとんと、違う曲になっていくので、飽きにくいし聞きつかれない。

カザルス以外にもリヒターとか、ミュンヒンガーとか、バッハの録音でも有名な人はいるんだけれど、たまたま手元にはこの二人の録音しかなかったので、この二つを聴き比べてみた。

というか、この、ベイヌムという指揮者の録音は、注意が必要。クラシックファンなら一度は聞いてみてほしいけど、クラシックファンじゃない人には、避けてほしい。

バッハをはじめとするバロック時代の音楽というのは、くっきりとしたリズムを刻んで縦ノリで演奏するのがふつうで、カザルスの演奏も、バッハ研究の大家として、さすがにその伝統にはのっとっている。平和とバッハを愛する強い思想が演奏からもにじみ出てるとか出てないとか、感じる人は感じればいいけど、とりあえずそんな難しいことは置いておいて、とてもバッハらしい、いい演奏。

ところが、このベイヌムという人は、そんな”バッハらしさ”みたいなのはまったく意にも介さず、まるで、流れるようにこのバッハの管弦楽組曲を演奏している。無駄な派手さとか、芸術性をやたら強調するようなクサさとかは全然ないので、ある意味とても楽譜に、音楽に忠実な人なんだと思う。この録音をBGMとして流しても、疲れないし、不快感は全然ない。だから、イージーリスニングとしてはとてもいいかもしれない。

ただ、バロックというのは、基本的にどの曲もリズムがしっかり感じられるものなのだ。「とんとんとんとんひげじいさん!」という感じ。ところが、ベイヌムの演奏は「とろとろとろとろひーじーさん」みたいな感じなの。

文句はないし、ダメなわけじゃない。音楽としては子供に聞かせるのには悪くないかもしれない。ただ、これが、子供が成長して、バッハとモーツァルトの聞き分けが出来なくなるとこまるなぁと、若干クラシックファンの私としては思うわけです。