出産立ち会いの日(夫の体験談)④
8時、検診が終わった病室に入ると、妊婦の姿勢が変わっている。
仰向け。
おお、もうおさなくていいやつだ。
助産師さん?が私とお義母さんの顔を見るなり「妊婦さんが、お二人とも立ち会っていただいて大丈夫とのことですので…」と言った。
ほうほう。
ここからが立ち会いというやつなのか。
お二人?
わたしも?
いやお義母さん?
え?
私だけじゃなくて?
いや、別に文句はないけど。
どっちにしても後は待つだけか、とちょっとほっとする間もなく、大変なことに思い至る。
違う!違う!
あのー、できれば私は部屋の外でお待ちしておりましょうか、という言葉がのどまで出る。
逃げ出したい。
無理。
流血とかハサミで切るとか、ほんとむり。
生まれてくるのはいいけど、特にハサミで切るところが、どーしてもむり。
絶対いや!
あとはお邪魔でしょうから外で待ちますよ、と言いたい。
普通、立ち会いますか?とか聞いてくれるんじゃないのか。
俺の意思確認はまだじゃないのか。
この病院のインフォームドコンセントはどうなっておるのか!
と思ったが、すでに、逃げ出せる情況ではない。
奥さんと目が合った。
奥さんが黙ってうなずいたような気がした。
もうどうしようもない。
腹をくくるしかない。
まあ、立ち会うかどうか聞かれたところで、断れるものでもない。
タオルでかくされてる要所が見えないことにほっとしながらも、ハサミの刃がすれあうような、かしゃ、という音が奥さんの股座の方向から聞こえるたびにびくびくする。
この時点で、もう、そっちは見られない。
器具のなかにハサミが見えたので、怖くてむり。
妊婦の顔と手と床を順繰りに見ながら、必死で妊婦の下半身の方角から目を背け続ける。
といって、いつ切るんですかとか、聞けない。
妊婦も聞きたくないだろうし、私は聞きたくない。
助産婦さん、「このタオルとりますね~。」
私が、え?タオル取るの?という顔をしたんだとおもう。
結構なさけない顔だったんじゃないか。
せっかく見るのが怖いところかくしてあるのに。。
「テレビとかでは最後までかけてたりしますけど、あれはテレビ的なね。」
丁寧な説明ありがとうございます。
何のためにかけてあり、何のためにはずすのかは、今でもよくわからない。
うう。
丸見えになるのか。
とにかく一番痛いところだけはみたくない。
必死で目をそらす。
チラッと目を向けると奥さんの太い太ももで大事なところは隠れていた。
ビバ太もも!
このために太ももは太いのか、と思う。
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